大都市に生まれる巨大な空間

 上の画像は、取り壊された九州大学工学部2号館跡と、その奥に現存する近代建築です。平成30年度には、九州大学箱崎キャンパスは、西区の伊都キャンパスへと移転完了予定です。同時に、150万都市である福岡市の中心部からほど近い箱崎地区に、約43ヘクタールの巨大な空間が生まれます。ただの空き地ではありません。百年の知の歴史を持つ空間です。百年間の日本の発展とともに建てられてきた象徴的な近代建築群、農学部を中心とする豊かな木々、そして発展の礎となった学問の地としての誇り。こうした遺産を次世代のまちづくりに活かすことができれば、九大跡地は、福岡のみならず、日本の財産となるでしょう。

資料図1

 

知の跡地に、知恵を集めたい。

 近代建築物や緑の木々を再生活用するためには、多くのお金が必要です。大学としては、跡地を処分する必要があり、保存対象となる建物を除いては、解体、更地化が前提となっています。跡地再生に百年の歴史を引き継ぐことができる事業者が求められます。これは、ひとつの企業だけで実現できるものではありません。企業の資本力だけに頼って、更地化された場所に新しいマンションやショッピングセンターを作ったとしても、土地や歴史から切り離されたその場限りの開発となります。地域からも受け入れられませんし、世界の流れに反することで却って価値を損ないます。作っては壊す20世紀の消費型開発ではない、21世紀の循環型開発ができる環境がここにはあります。今こそ、ここに、たくさんの知恵を集めたいのです。「三人寄れば文殊の知恵」と言うように、千人、万人の知恵を集めて未来へのバトンを引き継ぎたいと願っています。

資料図2

 

近代建築遺産と豊かな樹木。
一体的なテーマによる都市ブランド価値向上。

ヨーロッパを旅行して歴史ある街並の中で文化を営みながら暮らす人々を見て、日本の雑然とした街と比較して残念な想いをした経験はありませんか?でもこの跡地にはそんな街のポテンシャルが秘められています。近代建築の再生活用は、都市ブランドの価値向上だけでなく、利活用によって新たな都市文化を醸成し、さらに観光資源として世界の注目を集めることも可能です。もし、近代建築が残る大学跡地から1つの街を形成し、新たな文化を生むことが出来たら、そのストーリーこそが最大の価値となるでしょう。世界中の旅人にとって、この街を訪れ、滞在し、街の人と交流することが最高の魅力となるのです。

資料図3

 

さいごに – 跡地と未来への想い –

いま私たちは都市の大きな問題に直面しています。与えられたものをただ買い続ける、受動的な「消費」のみに頼った経済だけでは、やがて「消費する力(=消費力)」はどんどん小さくなり、結果、経済のみならず社会全体の力が弱まっていきます。経済発展を追求する、作り続けるだけの考え方ではなく、今こそストックを循環させるべき時です。自ら創ることと、消費することとがつながり、深い喜びを知ることができる、創造性が発揮される環境から生まれる「創造的消費」が、持続可能な都市社会における「消費力」なのではないでしょうか。グローバル市場における都市間競争の中に福岡もあるわけですが、同じ土俵にいるだけでは、資源や時間を消費させられ続け、やがて消耗します。そこで独自のローカルルールをつくる必要があります。それが、都市の生産力、消費力に還元され、新たな人材を生み、事業を生み、福岡の未来を切り開くことでしょう。かつての学問の地である九大跡地には、未来の知恵が埋まっています。

九大箱崎キャンパス跡地MAP

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